« 海外旅日記10 Europe2003 <4> | メイン | 海外旅日記12 Europe 2003<6> »

2012年02月18日

海外旅日記 11 Europe 2003 <5>

10月11日
今日は久しぶりゆっくり起き、昼過ぎに出発。
列車の中で バンドのメンバーの一人が私の前に座り、きのうのコンサートを録音したCDをヘッドフォンでじっと聴きながら、私にほほ笑んだ。
その時、なぜかわからないが、ふいに涙があふれ出し止まらなくなった。
それは悲しいというのではなく、むしろ心の緊張が溶けて涙になってあふれ出すようなあたたかい感覚だった。
コンサート会場のあるFaenzaという町にあるレストランに着くと、女性のオーナーがいきなり私の手を引いて奥へと連れていく。「?」と思いながらついていくと、キッチンで働くFさんという日本人シェフを紹介してくれた。
久しぶりに日本語を話し、オープンな雰囲気の中で自分の気持ちがどんどんほぐれていくのを感じる。
コンサートは大成功。
今まで抑えていたものすべて解禁したようなのびのびとした演奏ができた。
中庭まであふれた100人ほどのお客さんは大きな拍手で湧きあがり、演奏の後はたくさんの人が話しかけ握手を求めてきた。
演奏後は、メンバーと祝杯。
ミゼラブルな思いを何度か経験した後だけに、ビールの味も格別!!
朝の4時ごろまで語り明かす。


10月12日
スイスに戻るHと駅で別れ、最後のコンサート会場があるローマへ。
店は板張りでできたステージと階段状の客席がある小さいがお洒落な空間。
店の長椅子に横になり少し仮眠をとった後、みんなで散歩へ。
疲れて意識が朦朧としているのか石畳で何回も転んだが、パンナコッタのアイスを食べたら少し元気が蘇った。
今夜はこのツァーで初めてのトリオ演奏。
会場へ戻るとたくさんの聴衆が座っていて少し焦ったが、演奏はうまくいき観客の反応も良かった。
やった~!やっと終わった~!!!!!!
祝杯をあげたあと、灯りを消しベッドに横になると、喜びが静かにこみ上げてくる・・・・・


10月13日
今日は、一日ローマ市内を観光。
古い建物を眺めながら細い石畳の道を歩いていると、時間を超えてタイムスリップしたような錯覚を覚える。
夜はディナーを食べながら、メンバーや昨日のコンサートのオーガナイザーたちと談笑。といっても、彼らは、イタリア語、ドイツ語、英語、スイスジャーマン(スイス特有のドイツ語)フランス語など、話題に応じて、スポーツのように言語をスイッチしていくので、私はもっぱら聞き役だ。ここ2週間ずっとそういう環境に身を置いていたせいか、話の内容はほとんど理解できるようになっていたが、自分ももっとしゃべることができたら・・・と切に思った。

このツァー、決して楽なものではなかったが収穫は計り知れない。
本当に自由になりたかったら、まず自分の輪郭(限界)を知ることだ、と以前音楽の先生から言われたことがあるが、今回の体験は、否が応でも私の輪郭を浮き彫りにするものだった。力が足りない部分を思い知らされた反面、今まで知らなかった自分の力に気づくこともあった。
ヨーロッパの人々(メンバー,聴衆とも)の反応の仕方は、かなり率直でシビア、しかしヒューマンだ。不本意な演奏をしたときは情け容赦ないが、いい演奏をすると、同一人物かと思うほど肩を抱き祝福してくれる。
鏡のように実像を映し出してくれるこの環境は、自分の音を鍛え上げ育てていく上で、必要不可欠なものに思えた。


10月14日
なんと私の目覚まし時計、ツァーの間中ずっとイギリス時間にセットされていたようだ!(ヨーロッパ大陸の国々より時差で一時間遅れ)
ベルンに戻り荷物を整理していて気がついた。
どおりで毎日叩き起されたわけだ。(今更気がついても遅いんだけど・・・)
ともかくツァーは乗り切ったし、ギャラももらえた。明日からパリでバカンスだ!!

投稿者 yokomiura : 2012年02月18日 22:57