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2012年02月04日

海外旅日記 9 Europe 2003 <3>

10月5日 (続き)
とりあえず気分は立て直したが、きのうの演奏が良くなかったことは確かだ。
今夜もあんな演奏をしたら、完全にアウト。立ち直れなくなる・・・
私は、列車の中で、ベルン、ウィーンの演奏をもういちど最初からじっくり聴きなおし、このバンドのコンセプトを自分なりに解釈し、演奏法を考えた。
それにしてもこのツァー、かなりハード。
今日も朝6時にホテルを出て、7時すぎ列車に乗り、4回乗り継いで(一度など、走り始めた列車に荷物を放り込んで、飛び乗った。)時計を見ると、もうすぐ7時。12時間乗ってもまだ着かない・・・
ようやく目的地ドイツのMunsterにある会場に着いたときは、7:50。
隣のファーストフードの店で、フォラフェルと紅茶でとりあえず空腹を満たした後すぐに、演奏を始めた。

コンサートはうまくいった。
肩の力が抜け、自分のできることをすればいい、と心が定まった結果だろうか。
演奏していて、バンドのメンバー、観客たちと響き合っているのを感じた。
コンサートのあとは、みんなでトルコ料理店に行き、打ち上げ。
とてもくつろいだ雰囲気で、3日目にしてやっと、このバンドのメンバーになれた実感が持てた。
明日はいよいよベルリン。楽しみだ!




10月6日
ここの会場のピアノは、なんでも100年ほど前のものということで、調律は狂っているし出ない音が10以上ある。普段はもう使ってないらしく、ロビーで埃をかぶっていた。
エレピならいい状態のものがあるいうことだったが、私はこの古い骨董品のようなピアノでやってみたいと思った。
「陽子、君はどうしてフルートを演奏しないの?」冗談まじりながら、ため息をつき、会場の責任者は重いピアノを4人がかりでふうふう言いながら、ホールまで運んだ。
それにしても、このピアノでは、細かいニュアンスはとてもじゃないけど出せないし・・・(どの音が鳴るかわからないほどの状態だ。)
どうしよう・・・
結局、メンバーが貸してくれたクリップや電動ブラシのようなものを使って、いつもとはまったく違うアプローチで演奏してみることにする。

1階に会場があるこのビルは、2階が企画室とキッチン、3階から上はアパートになっていて、世界中からやってきたアーティストたちが住んでいるということだ。
サウンドチェックをすませた私たちは、それぞれ、今夜寝る部屋へ案内された。私が今夜寝るのは、最上階の洗濯物がほしてある屋根裏部屋。Lの字になったそのスペースはかなり広いが、ひとりで使っていいということ。私は、洗濯ものをかきわけながら、天窓がある部屋の端っこに寝具をセットし荷物を置いた後、キッチンへ降りていき、みんなと食事をした。
それにしても、ここはすべてのつくりが大きい。流しなど、ちょっとしたバスタブくらいの大きさで、背の小さい私は、蛇口をひねるのに、精一杯つま先だって、腕を思い切り伸ばさないと届かないのだ。言葉はドイツ語、英語、フランス語その他私の知らない言葉が、頭の上を行き交っている。

いよいよ本番。
会場にはたくさんの聴衆が入り、熱気に包まれている。
なんかみんな迫力あるな~体も大きいし・・・
圧倒されそうな思いではあったが、バンドのサウンドがつかめてきた私は、むしろリラックスして演奏できた。
コンサートは大成功。
大きな拍手をもらい、アンコールにもこたえた。
先ほどフルートにしたら?と言った会場の責任者も、満面の笑みで両手を広げ祝福してくれた。
ロビーで祝杯をあげ、充実感と安堵感に包まれながら暗闇の中を手探りで階段を上り、最上階、私の部屋にたどり着く。
ところがドアを開けると、暗闇の中から、「Who are you?」という男性の声。
「I,Iam a pianist…!」「...」
反射的に答えたが、「えっ?この部屋、私だけじゃなかったの?!あなたこそ誰よ・・・」
と思ったが、ここはビル全体、合宿のような雰囲気だし、声の方向からして部屋の反対側にいるようだし、それよりもう一刻も目が開けていられないほど疲れていたので、暗闇の中手探りでベッドの方向に行き、とにかく眠ることにする。
朝になり、ドアのほうに歩いて行くと、部屋の反対側の隅からリュックを背負った男の人が出てきたので「おはよう!」と挨拶し、握手。キッチンに下りていき朝食をとる。
アパートの住人の人たちに話すと、彼は定住するところがなくて、時々、屋根裏部屋へ来て泊まっていくのだそうだ。
「ふ~ん・・・それってホームレスってこと?!」




10月8日
前の日は、一日オフ。
私は、Pと彼の友達の家に遊びに行ったが、疲れていたのか、食事の後,目が開けていられないほど眠くなり、寝室で昼寝をさせてもらう。
今日はオランダ。ここのところワインを飲みすぎたせいか、体調が今ひとつ。
気分は上々なんだけど、ちょっと疲れ気味だ。
夕方6:00すぎ、オランダのTiburgに到着。
土砂降りの中、トランクを引きずりながら石畳を歩く。
店はグランドピアノのある広々とした素敵な空間だった。
演奏前は、肩がパンパンに張っていて、ちょっと不安だったが、本番は集中して演奏でき、メンバーも絶賛。CDも売れた。
ただ、疲れがピークに来ている。
ホテルのバスタブの湯にラヴェンダーを落とし、湯船につかっていたら、そのまま眠りこみ、気がつくと朝の3時。
明日は5時起きだ・・・

投稿者 yokomiura : 2012年02月04日 00:32